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能作|新しい感性で鋳物の未来を切り拓く(高岡銅器)

能作|新しい感性で鋳物の未来を切り拓く(高岡銅器)

ものづくりの町、富山県高岡市で1916年に創業した鋳物(いもの)メーカー「能作(のうさく)」。高岡の地に400余年伝わる鋳造技術をベースに、新しい感性を加えたデザイン製の高い金工品を次々と発表している。シンプルながらも洗練されたデザインは、多くの人の心を魅了してやまない。

 

伝統とは革新の連続

高岡市では江戸時代から銅器づくりが盛んに行われてきた。この地で100年以上の歴史を持つ老舗鋳物メーカー能作は、高岡銅器の歴史と伝統を大切にしながら、鋳造(ちゅうぞう)の新たな可能性に挑み続けている。

金属材料を熱して溶かし、作りたいものと同じ形状の空洞を持つ型(鋳型)に流し込み、冷やし固める加工法を鋳造と呼び、その型から取り出した金属製品を鋳物という。能作は高岡で受け継がれてきた鋳造技術を用いて、仏具や茶道具、花器の生地を1916年の創業以来製造してきた。

もともとは下請け工場に過ぎなかったが、能作克治氏が代表取締役社長に就任した2002年以降、そのビジネスを一変させる。能作社長は大阪芸大でデザインやカメラを学んだのち、大手新聞社のカメラマンを経て、1984年に能作に入社。18年間、鋳物職人として腕を磨くうちに、いつしか「下請けから脱却して、お客さんの顔が見える仕事をしたい」と思うようになった。

そこで、職人として長年培ってきた技術力や鋳物特性や素材特性の知識、そしてデザイン力を兼ね備えていることを強みに、「能作」ブランドの商品開発に着手。試行錯誤する中で、真鍮製のハンドベルを日本人に馴染みのあるモダンな風鈴にアレンジしたところ、大ヒット商品に化けたという。

これを皮切りとして、インテリア用品やテーブルウェアなど、現代のライフスタイルに合う新たな商品を打ち出した。さらに近年では、分野を越えたものづくりにも取り組んでおり、2014年には錫のもつ抗菌作用と曲がる特性に着目し、医療機器の分野に参入した。

能作社長の信条は「伝統は革新の連続である」だ。伝統を頑なに守っていくだけでは廃れてしまう。革新を重ねることで、それがまた新しい伝統になり、次世代に受け継がれていくのだ。

その志を胸に抱き、今日も能作は、新しい素材・技術研究や商品開発に挑み続けている。

 

持続可能なものづくりへの取り組み

高岡で伝統的に用いられている生型鋳造法では、少量の水分や粘土を混ぜた砂を木型の周りに押し固めて鋳型をつくる。他の鋳造法と違い、鋳造前に鋳型を焼成・薬品処理することなく、鋳型をつくるための砂は何度でも利用できるので、サスティナブルといえるだろう。

能作ではこの技法で、多くの商品を製造している。さまざまなメリットがある鋳造法だが、砂を押し固めただけの鋳型だから、型崩れを起こしやすいのが欠点だ。そのため、熟練した職人が製品の形状やその日の気温・湿度を考慮した上で、ひとつひとつ手作業で整えている。高度な技術があってこそなせる業だ。 

最近では、より微細な表現に適したシリコーン鋳造法も取り入れている。シリコーン型は繰り返し使用できるうえ、粉塵廃砂などを排出しないため、より環境に配慮したクリーンなものづくりを可能にしている。

また能作は、製造販売だけでなく、受け継がれてきた職人の心や技を伝える観光事業にも取り組んでいる。2017年に移転した工場では、工場見学や錫のぐい飲みや小皿などの鋳物製作体験ができるようになった。能作の器で地元の食材を使った食事を楽しめるカフェやショップも併設。高岡の伝統工芸・高岡銅器を次世代に伝える役割を担っている。

 

無限の可能性を秘めた錫100%製品の魅力

能作は、世界で初めて錫100%製の「曲がる食器」を開発したことでも知られている。

錫は酸化しにくく、抗菌性の高い金属だ。そのため昔から、錫の器に入れた水は腐らない、酒の味をまろやかにするなどといわれ、酒器や茶器に使われてきた。

錫はやわらかい素材であるため、多くの錫製品は、強度を増すために他の金属を混ぜて仕上げられている。

しかし、能作は「あえて誰もやっていないことをしたい」と高い技術力を武器に、錫100%製のテーブルウェアづくりに挑戦。その加工は難題だったが、逆転の発想で曲がることを強みにした錫器を生み出した。

その斬新な発想のもとに生まれた、曲がる「KAGO」シリーズは、日本国内はもとより海外でも人気を博している。

KAGOと銘打っているが使い方は自由自在。フルーツやパンを入れるバスケット、ワインホルダー、フラワーベース、マガジンラックなど、使い手の用途に合わせて好きな形に変えられる。普段使いにはもちろん、贈り物としてもおすすめだ。

先人たちが培ってきた技術と現代の感性が融合した、新感覚の工芸品をぜひ手に取っていただきたい。

 

能作

富山県高岡市で1916年に創業した鋳物メーカー。高岡の地で400余年受け継がれてきた鋳造技術に新しい感性を吹き込み、現代のライフスタイルに寄り添うものづくりを展開。やわらかい錫の特性を最大限に生かした、錫100%の曲がる器「KAGO」シリーズをはじめ、アイディアあふれる商品を数多く手がけ、国内外から注目を集めている。

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