2013年にユネスコの無形文化遺産にも登録され、今や世界から注目を集める日本人の伝統的な食文化「和食」。和食ブームとともに日本酒も広がりをみせているが、どこかとっつきにくいイメージを持っている人も少なくない。
こうした従来の概念を覆すのが、スパークリング日本酒「AWASAKE(泡酒)」だ。軽やかな口当たりと華やかな見た目で、日本酒初心者からも好評を得ている。そのきめ細やかな泡立ちは特別な日にも相応しく、乾杯のお酒として活躍してくれるだろう。
めざすのは世界基準の乾杯酒
AWASAKEとは端的に言えば、発泡性の日本酒のこと。一般的にはスパークリング日本酒と呼ばれている。ただし、そのすべてがAWASAKEを名乗れるわけではない。一定の基準を満たした特別なスパークリング日本酒だけに与えられる称号だ。
スパークリング日本酒は日本酒の新カテゴリーとして位置づけられているが、その歴史は意外と古く、一部の酒蔵では太平洋戦争(1941~45年)以前から造ってきたという。しかし、技術的な問題で安定供給が難しく、消費者の口にも合わなかったことから、日の目を見ることはなかった。
そんなスパークリング日本酒だが、近年になってようやく脚光を浴びるようになる。品質安定性が向上したと同時に、消費者の嗜好が広がり、人気は急上昇中。日本酒にあまり馴染みがない人でも飲みやすいと評判だ。
ニーズの高まりとともに、ここ数年で多くの蔵元が手がけるようになったスパークリング日本酒だが、その製法に明確な基準はなかった。
そこで2016年に、全国の名だたる蔵元が集結して「一般社団法人awa酒協会」を設立。厳しい基準をクリアした銘柄のみをAWASAKEとして認定し、シャンパーニュやフランチャコルタに遜色ない"世界基準の乾杯酒"になることをめざしている。
瓶内二次発酵による細やかな泡と上質な味わい
awa酒協会では、商品開発基準と品質基準の2つを設け、それらを遵守するスパークリング日本酒をAWASAKEとして定義している。
商品開発基準で定められているのは「醸造中の自然発酵による炭酸ガスのみを保有していること」「外観は視覚的に透明であり、抜栓後容器に注いだ時に一筋泡を生じること」「アルコール分は、10度以上であること」などの6項目。品質基準については「常温で3ヶ月以上、香味、品質が安定していること」などが定められている。
シャンパーニュと同じ二次発酵の手順を踏んで丁寧に造られたAWASAKEは、きめ細やかな泡立ちと日本酒ならではのピュアな甘みと香りが特徴だ。グラスに注ぐと美しい一筋泡が沸き立つ。食事との相性も良く、食卓のシーンを選ばない。乾杯酒としてだけでなく、食中酒としてもおすすめだ。
一口にAWASAKEと言っても、銘柄ごとにさまざまな特徴がある。それぞれの香りや味わいを楽しんでみてはいかがだろうか。
ここでは代表的な2つを紹介しよう。
MIZUBASHO PURE
構想から10年、数百回にも及ぶ試行錯誤を経て、2008年に完成。ドライな味わいでどんな料理にも合わせやすい。チェリーやライチの香味を持ち、シルキーな泡が妖精のように料理を包む。ヨーロッパの三ツ星レストランでも採用されている。
南部美人あわさけ
世界一の日本酒を決めるコンテスト「SAKE COMPETITION」の発泡清酒部門で2年連続1位を獲得。スパークリングの爽やかさもありながら、後味にしっかりとした米の旨味が残るバランスの良さが魅力。優しい口当たりとほのかな吟醸香が心地いい。