今や日本食の代名詞ともいえる寿司。アメリカやヨーロッパでは、ロールと呼ばれる巻き寿司が一般的だが、日本では目の前で職人が握る「にぎり寿司」が主流である。もし日本を訪れる機会があれば、ぜひ本場の寿司を味わってみてはいかがだろうか。今回は、日本で本格的な寿司を楽しむために知っておきたいことを解説する。
カウンター席で味わう寿司の魅力
にぎり寿司の起源は、約200年前の江戸時代後期までさかのぼる。当時は独身男性が多い町だったため、さっと立ち食いできる屋台が大人気だった。江戸湾(今の東京湾)近郊で獲れた新鮮な魚介類を酢飯にのせて握った寿司は、今でいうところのストリートフード。その場で寿司を握って食べさせる「寿司屋台」が登場すると、気の短い江戸っ子たちの間でたちまち流行した。
当時は、職人が座って寿司を握り、客は立ったまま寿司を食べていた。手づかみで2つ3つちょいとつまんだあと、飲み残したお茶で手を洗い、濡れた手を暖簾で拭いて帰っていったそうだ。現代では、職人が立ち、客は座るスタイルに落ち着いたが、寿司屋で今も見かけるカウンター席は屋台の名残と考えられる。
近年では、寿司をベルトコンベアにのせて循環させ、客が好きなものを自由に選択できる「回転寿司」もファミリー層を中心に人気を博している。ふらりと気軽に立ち寄れて、値段もリーズナブルなのが魅力だ。
しかし、せっかくなら、一流店のカウンター席で本格的な寿司を味わってみてはいかがだろうか。選び抜かれた食材を使った寿司は、味もさることながら目にも美しい。寿司職人のきびきびとした動きを間近で眺められるのも、カウンター席の特権だ。熟練の職人は無駄な動きが一切なく、流れるような手捌きで寿司を握ってくれる。伝統の味ともてなしの心を感じながら、本場の寿司をゆっくりと楽しんでいただきたい。
おすすめ寿司ネタ&注文の仕方
寿司のネタは数え切れないほどたくさん存在する。ここでは、日本でぜひ食べてほしい寿司ネタをご紹介しよう。
マグロ
日本人にとって、マグロは王道の寿司ネタだ。部位によって、赤身・トロ・中トロ・大トロなどさまざまな味を楽しめる。
イクラ
赤真珠のごとく、宝石のような輝きを放つイクラ。一口頬張ると、プチッと弾けて、舌の上で濃厚なうま味が溶け出す。
ウニ
黄金に輝くウニは、寿司ネタの中でも1、2を争う高級食材だ。クリーミーな食感で、磯の香りと濃厚な味わいが特徴。
甘海老
とろりとした食感と甘みが特徴。きれいな赤色が食欲をそそる。
タイ
白身魚の王様。あっさりとした味わいとコリコリした食感を楽しめる。
アナゴ
濃厚な煮詰め(タレ)が塗られたアナゴは、リッチな味わいで、一貫でも満足感がある。
玉子
「玉子焼きを食べれば職人の腕がわかる」といわれるほど、重要な寿司ネタ。デザート感覚で味わえるので、寿司を締めくくるにふさわしい。
寿司を注文する方法
特にこれといったルールはないので、好きなものを気軽に注文しよう。それぞれの味を楽しみたいのなら、味の薄い白身魚から始めて、トロや穴子といった味の濃いものへと進んでいくといい。わからなかったら店の人に「おすすめ」を聞いてみよう。ネタケースに並んだ具材を指さしてオーダーしてもOK。職人との会話を楽しめるのも、カウンター席の特権だ。
格式ある寿司屋のカウンター席は、少し緊張するかもしれない。リラックスして過ごすために、基本的なマナーについて押さえておこう。
日本を訪れる予定がある方は、一流といわれる寿司屋へ足を運んでみてはいかがだろう。寿司を通して日本の食文化の豊かさをぜひ体感してほしい。職人の活気あふれるカウンター席で、江戸の粋が感じられる寿司を心ゆくまで堪能しよう。