8月の別名は葉月(はづき)。日本では8月というとまだ夏の暑い盛りの頃だが、旧暦では秋にあたり、「木々の葉が落ち始める月」を略して葉月となったといわれている。
8月といえば「お盆」。うれしいことや楽しいことが重なったときに、日本では「盆と正月が一緒に来たようだ」という表現を使う。日本人にとってお盆は、それくらい大切な行事なのだ。この記事では、お盆の過ごし方についてご紹介しよう。
お盆とは
お盆とは、8月15日を中心に行われる先祖供養の儀式で、正式名称を「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という。「盂蘭盆会」は古代インドのサンスクリット語「ウラバンナ(逆さ吊り)」を音訳したもので、地獄や餓鬼道に落ちて、逆さ吊りにされて苦しんでいる死者を供養するために行われる仏教行事だ。これに日本古来の祖霊信仰が融合して、現在のお盆の形になったといわれている。
日本では、お盆の期間に先祖の霊魂があの世から現世に帰ってきて、数日間を家族とともに過ごし、お盆が終わると再びあの世に帰っていくと信じられてきた。先祖が現世で過ごす期間は「中日(ちゅうにち)」と呼ばれ、自宅に僧侶を招いて読経をあげてもらったり、家族や親戚で集まって会食をしたりして過ごす。
お盆の時期は地域によって異なるが、一般的には8月15日前後の3〜4日間を指す。日本では多くの企業がこの期間にあわせてお盆休みを設けているため、帰省や旅行する人も多い。仏教行事としてだけではなく、いろいろな過ごし方があるが、一つ言えるのは日本人にとってお盆は特別な期間ということだ。
お盆にまつわる行事
お墓参り
日本人は先祖代々、同じ一つの墓に入るのが一般的。そのため、お墓参りが先祖を供養する行事として定着している。お墓参りでは墓石や周囲をきれいに掃除し、線香や花、故人が好きだった菓子やお酒などを供えて、静かに手を合わせる。これは、故人や先祖に思いを馳せ、感謝の気持ちを捧げるためだ。
お盆飾り
お盆になると「精霊馬(しょうりょううま)」といって、キュウリを足の速い馬、ナスを足の遅い牛に見立てて飾る習慣がある。これらは、先祖があの世とこの世を行き来するための乗り物として用意するものだ。馬には先祖の霊にあの世から早く帰ってきてほしい、牛にはあの世へゆっくり戻ってほしいという気持ちが込められている。
迎え火・送り火
迎え火とは、先祖の霊が迷わず帰って来られるよう目印として、玄関先や庭などで焚かれる火を指す。送り火は再びあの世へ帰る先祖を見送るために焚く火だ。火を焚く代わりに盆提灯を灯す場合もある。
盆踊り
盆踊りとは、お盆の時期に老若男女が集まり、輪になって音頭や歌に合わせて踊ること。ただの踊りではなく、お盆に帰ってくる先祖をもてなして、供養する目的で行われる。
灯籠流し
お盆の送り火の一種で、盆前に死去した人の遺族が故人の霊を弔うために、手づくりの船にお供え物を乗せて川や海に流す。淡い光が水面をゆったりと流れる光景は幻想的だ。
有名なお盆のイベント
大文字五山の送り火
毎年8月16日に行われる京都の伝統行事で、俗に「大文字焼き」として知られる。京都を囲む5つの山にそれぞれ「大文字」「左大文字」「妙法」「船形」「鳥居形」の形に火が灯される。夏の夜空を赤く彩る送り火は圧巻だ。
長崎の灯籠流し
故人をにぎやかに極楽浄土に送り出す長崎の伝統行事。お盆の夜に故人の霊を「精霊船」と呼ばれる船に乗せ、爆竹や花火を鳴らしながら町中を練り歩く。爆竹を鳴らすのは魔除けの意味がある。間近で見ると大迫力と大音量に驚くだろう。