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日本 文化 アート 伝統工芸 製品

今村能章|未知の世界を探る「陶」の表現者

独自の世界観を持ったオブジェや器を生み出し続けている今村能章(いまむらよしあき)。今村氏のものづくりは、工芸、アートの枠に収まらない。彼にとって陶芸とは、土と炎の出会いによって生み出される究極のケミストリー。窯から取り出した「未知なるもの」と遭遇することが、作陶を続ける原動力になっている。

 

飽くなき探究心から生まれた、唯一無二の作品

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もともと立体表現に興味があった今村氏は、その表現方法として陶芸を選んだ今村氏。沖縄県立芸術大学の陶芸専攻に進学し、最初の2、3年はロクロや伝統工芸などをとことん学んだが、型にはまった技法に全く興味を持てなかったという。

大学4年生になり自由な表現が許されると、とにかく「焼く」ことに夢中になった。拾ってきたアスファルトや珊瑚など身の回りのあらゆるものを実験的に釜に入れ、焼き上がったものと向き合う日々。そこには驚きと発見があった。

窯の中は1300度もの高温に達し、地球上にある大抵のものは溶け出す。土の種類や使う釉薬、火の温度、火の巡りによって、作品の表情が変わる。人の手を介さない重力と熱だけの世界から生み出された、不規則な曲線や複雑なデザイン。その過程は、地球が長い年月をかけて鉱物や岩石を形成する営みにもどこか似ていた。

自然界に存在するさまざまな物質を唯一無二のものへと変化させる。その姿はさながら錬金術師のようだ。10種類以上の粘土や釉薬を計算しながら調合するが、最後は窯にゆだねるしかない。窯出しした時に、まだ誰にも見られていないものの「最初の目撃者」になれることが陶芸の醍醐味だ。「地球と真剣勝負している感覚が心地いい」と今村氏は笑う。

キリスト教の家に生まれ、幼い頃から人類の誕生やノアの方舟の物語などを身近に育ったが、かつては素直に信じられなかったという今村氏。しかし、母なる海に抱かれた沖縄の地で形あるものを創造するうちに、人間が太刀打ちできない自然の偉大な力を目の当たりにして「まんざらありえない話じゃない」と考えるようになっていった。「重力ってなんだろう。人間ってなんだろう」。そんなことに思いを馳せながら、ものづくりを追求し続けている。

人間の顔が連なるグラスや、取っ手がドアノブ型になったカップ、宇宙の成り立ちを喚起させるオブジェなど、一度見ただけで強烈なインパクトを与える彼の作品は、多くの人を魅了してやまない。

 

最高の一杯を追求したエスプレッソカップ

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今村氏は、実験的な創作活動を続ける一方で、使う人の目線に立った器づくりにも力を注いでいる。その中でも、すっぽり手に収まるエスプレッソカップの人気は高い。

もともとコーヒーが好きだったという今村氏。今から13年ほど前においしいエスプレッソに出会い、そこから一気にその奥深さにのめり込む。やがて「より美味しくエスプレッソを味わえるカップが作りたい」と思うようになり、カップづくりに取り組んだ。

コーヒーの歴史を紐解いていくうちに、日本の抹茶と同じく深い世界があることを知る。エスプレッソ発祥の地、イタリアではカップの大きさや厚み、角度が研究され尽くされていた。しかし、そのまま真似るだけではただのコピー。そこに日本人の感性を加えてみたらどうかと考えたのがエスプレッソカップ誕生のきっかけだ。最初の構想から5年の年月をかけ、ようやく納得できるものが完成した。

今村氏のカップには取っ手がなく、その質感を手のひらで感じながらコーヒーをじっくり味わえる。日本の茶道に通じる風流な楽しみ方ができるだろう。オフィスや外出先でも使える機能性とデザイン性にもこだわった。ファッションアイテムのような感覚で持ち歩くことができる。

エスプレッソカップと銘打っているが用途は自由。好きなように楽しんでもらって構わない。カップを通じて、新たな価値観やライフスタイルを提案していけたら、と今村氏は語る。その独特のフォルムと色彩の美しさから、世界中で多くのファンを獲得しているエスプレッソカップ。口をつける場所によって変わる味わいや風味をぜひ楽しんでいただきたい。

 

作品紹介

ESPRESSO
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内側が金でコーティングされた重厚感のあるエスプレッソカップ。ゴールドの煌めきが、エスプレッソの表面に浮かぶクレマ(泡)を美しく引き立たせる。豆の良さを最大限に引き出すために口当たりまで計算されたこだわりの逸品。

2022年には、イタリア発祥のブランド「BOTTEGA VENETA(ボッテガ・ベネタ)」の店頭展示・顧客へのギフトとして選ばれた。ボッテガとは工房を意味するが、ボッテガ・ベネタでは職人技と創造性に優れたこだわりを持って実現したハンドメイド製品を制作しながら、小規模経営を行う生産者を支援することに取り組んでいる。

KISS
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飲み口に凸凹のあるデザインで、見る角度により表情を変えるカップ。自分が心地よい場所を探して唇を動かす様子がキスをしているように見えることから名づけられた。口当たりがなんとも心地よい。

GAP
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大量生産・大量消費へのアンチテーゼも込めたカップ。普段、作家の器を使わない人と作家とのギャップを埋める器として位置付けている。シンプルで扱いやすく、普段使いに適している。

 

今村 能章

1984年兵庫県出まれ。兵庫県で生まれ育ち、沖縄県立芸術大学へ進学を機に沖縄へ移住。同大学院を卒業後、2013年にアトリエ「studioooparts」を構え、本格的に作家としての活動をスタート。大学の非常勤講師を務めながら、精力的に創作活動を続けている。

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